中国インディーゲーム『飢えた子羊』感想-零创游戏《饿殍:明末千里行》

というわけで、タイトルの作品『飢えた子羊』(原題:《饿殍:明末千里行》)を遊びました。
先月Steamで日本語版にも対応したものが発売された、中国発のインディーゲームです。




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思い返せばこのブログではゲームについてあまり書いたことがなかったですね。
ADVというか、テキスト主体のノベルゲームをするのが元々好きなのですが…。
最近はあまりアプリゲームもやることがなく(少し前までは水都百景録をず~~~~~~っとやってたんですが、仕事がヤバくなったときに離脱してしまった)、ノベルゲームもぽちぽちと同人の成人向けをやったり…で。

ただ今回の『飢えた子羊』がわりと話題になっており、中国インディーズゲームが来るぞ…みたいな話を聞いたので、ちょっと興味が出て遊んでみました。
以下、簡単な感想を書きます。

サラッとですがネタバレありになります…ので!
自分で遊びたい方は見ないでくださいよろしくおねがいします。


==============以下ネタバレ注意==============








まず大前提として、

・子どもが可哀想な目に遭う
・サイコホラーのような圧迫感が苦手

上記に心当たりがある方にはあまりおすすめできません。
直接的にすごくめっちゃやばいグロい!ゴア!という描写があるわけではないのですが、結構苦手な人も多そうだな~って。
ゲームの背景が「大飢饉」「人身売買」というのはすでに明らかにされているので、そこから想定される事態は大体ゲーム中でも描かれます。
その他SNSなどの感想を見ても、R15と言っている人が多い感じですね。
CGが出てくることもあり、CERO審査したらD(17歳以上対象)のような…?


【良かった点】
●声優さんうまい
ヒロインの穂ちゃんがとにかくよかった。
とても有名な声優さんみたいですね!
最初のなんか胡散臭いガキだな…というところから、過去回想における真に迫った演技、終盤になってから…などなど変化していく様が声から伝わる素晴らしさでした。
(後述しますが)翻訳があまりゲームに適応していない感じなのですが、そこをそれぞれのキャラクターの演技で補ってくれるような形です。
訛りのあるキャラも出てくるのですが、みんな良かったと思います。
ちなみに、今後日本語ボイスを追加する予定があるそうです。
現状ではボイスは中国語のみとなっていますが、中国語がわからない日本語母語話者のプレイヤーも胸に迫る演技を感じ取っている様子がネットで散見されました。
自分もすごく良かったと思います~。

●シナリオの繊細な部分とダイナミズム、演出
かなり終盤にいたるまで、意外と手堅くこぢんまりした話に収束するのかな~という印象でした。
それが真エンドに入ると一気にぎゅい~んとダイナミックな行動へと移るので一見荒っぽいです。
しかし要素を見るといずれも既出であり、ゲーム全体にちりばめられた要素を使って大きな物語に仕上げるのがものすごく上手だと感じました。
こういううねりを出す大胆さと緻密さ、いいですよね…。

そして本作的に欠かせないのが「大飢饉」周りの描写です。
要するには人肉食がかなり尺を割いて描かれることになるのですが、このあたりの演出が非常に良かったです。
露悪的にならずに淡々と描きますが、そこに幻覚や夢も絡んできます。
ただ過去回想のCGの色設計も相まって、非常に乾いた・荒涼とした印象を与えてくるんですよね。
そこでコントロールされる分、起きている事実がより生々しく迫ってくるという…なんといえばいいか…。
とにかく上にも書きましたが、めっちゃキツいCGが出てくる!というわけではないのですが本当にダメなひとはダメかも。
BGMも相まって、息苦しさや圧迫感・緊張感が凄まじいです。
個人的にはものすごく良かった部分です。

一方で、物語全体を貫くテーマとしては「乱世・飢饉の中での人間性(≒善性)を保てるのか」みたいな部分になるのでしょうか。
ここが少し難しくて、微妙だった点でも後述したいですね。

●CG
現在軸(1632年)と過去回想(主に1628年)で、CGのテイストはわりと違います。
個人的にはそこの差に違和感はないです。
特に過去回想は基本的にCGのみで進行して立ち絵のADVパートがないので、枚数も必要だったというのがあるでしょう。
そのあたりのコストを考えると妥当というか、それでいて心情的にもばっちりあった雰囲気で作られていたと思います。
(ただ、穂ちゃんが穂ちゃんに見えるのか?というキャラクターの同一性みたいなところがプレイし終わったあとで考えると少し気になったかも…?)


【微妙だった点】
●翻訳
基本的には意味の理解に問題はありません。
キャラクターの口調などもだいたい統一されている感じです(たまに変かな、くらい)。
ただ、色々な部分でローカライズが徹底されておらず、わかりにくい部分は多々ありそうです。
また、フォントが日本語のものではないので、漢字が簡体字なことがよくありました。
誤字脱字や表記レギュレーションの揺れ、ミスなどは散見されますので、日本語で書かれたシナリオばりの完成度を求めるとちょっと違うと思います。
(たぶんこれを買う人は織り込み済みだと思うけど)
また、時代もの、中華もの、武侠ものに親しんでいない場合、読めない単語があるかもです。
基本的にルビ対応はされていないので、そういう部分もとっつきづらいかも。
致命的なことはない…とは思うのですが、日本人がやるときは人物名もルビをつけてあげないと呼び方がわからないよね、とか。

ただし、日本語ボイスの制作が決まっているのなら、このあたりは改善されると思います。
声優さんに収録をしてもらうとなると、イロイロ! このままってことはないと思いますので。
そこは今後に期待ですね~。

●主人公・良のキャラクター性
多少翻訳があれで感情までは汲めない…という時でも、他のキャラクターなら声優さんの演技で補足できていました。
しかし、本作は主人公の「良」にはボイスがありません。
そのためこの作品、上述した翻訳の問題も相まって、主人公のキャラクターがわかりにくかったです。
口調も揺れるし突然思考回路がギュイン!となる感じもあり、若い(青い)部分と盗賊の部分と…と複雑なパーソナリティを持ったキャラクターかもしれませんが、取っ散らかった印象があります。
エロゲ・ラノベ主人公的な女の子に振り回される硬派キャラ…なのか…?と思いますが、ここがなんか、こう、もっと魅力的にしたいかんじ。

●選択肢分岐のコンセプト
冷酷な盗賊として乱世を生き抜くぜ!と思ってプレイしてたら序盤の即死選択肢全部踏みました。
つまりこの作品は、「善人」にならないとすぐ死ぬという感じなんですね。
悪行を重ねても最後の方までいけて、そこでバッドエンドでどどーんと報いを受ける!という作りというよりかは、そもそも善人にならないと死ぬよ、という作りです。
そのため、あまり選択の余地がありませんし、プレイヤー側の人間性を試される機会というのは少ないです。
全体ボリュームの問題等もあるかと思いますが、売り出す時の文句からいってちょっと酷い人間になって女の子を売りさばく生き様できるのかな…と期待していたので、少し残念でした。
ADVゲームにおける選択肢をどうとらえるかは人によって違うと思いますが、あまり選択肢に葛藤は生じません。
今回のゲームのテーマで言えば、なんかいっこだけでも悪人用のエンディングがあってもよかった気がします。



ざっくりですが、感想は以上です!
1000ちょいという低価格(しかも自分はセール時に買ったので960円だったはず)でこのクオリティは良きかなと思います。
特にボイスあり、立ち絵、BGM、CG枚数も豊富…なので、普通に考えればなかなか実現が難しいところかと…!!
なのでこの作品が売れて零创游戏さんが良かったう~!というメッセージを出していたのがなんか私も嬉しかったです。

この作品と同一世界観の続編も開発予定みたいですね。
来年にはデモか直接販売か…みたいな記事を見たので、楽しみにしています。

ちなみに本作、舞台設定が明末で武侠小説やドラマが好きな人にはおなじみだと思いますので、そのあたりが好きな人にはぜひおすすめしたいです。
別に高スペックPCや操作が必要なゲームでもないので、気軽に遊んでみてください。

私としてはシナリオの品質がとても気に入ったので、これから《葬花 暗黑桃花源》のほうもプレイしようと思います(購入済み)。
こちらは今のところ日本語版がないので少し読むのに時間かかるかもですが…。
また遊んだら感想書ければいいなっておもいます!

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